日本語教師の歩き方

日本語教師のお仕事や大学院生活などを実体験に基づいてレポートするブログです

日本の常識って??【中国のテスト事情】

 みなさんは、「常識」と聞く、何を思い浮かべますか?

 私は、新入社員だった頃、よく人事部の人から、「提出の期限を守るのは社会人として常識だろう?!」とか、「常識を考えて行動してください」とか、

色々言われたものです。

 それと同時に、私もよく後輩社員に「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」は常識でしょ!?」なんて言って先輩づらしていたことを思い出します。

 

 では、常識って何でしょう?

 

  【常識】(commom sense)

普通、 一般人が持ち、また、持っているべき知識。専門知識でない一般知識とともに理解力・判断力・思慮分別などを含む                      (出典元:広辞苑

 

  この「持っているべき知識」とは一体どういうものでしょう?

 日本語学校で世界の国の人と接していると、【常識】というものを改めて考えさせられます。

 今回は私が日本語学校で働き始めて、始めに衝撃を受けたことを一つ紹介します♪

 

__________

 

 以前勤めていた学校は中国人がメインの日本語学校でした。

 私が受け持っていたクラスはみんな中国人。

 しかし、中国といえど、とても広い国のなので、北の方から来ている学生や、

南の方から来ている学生など様々です。

 初めて受け持ったクラスは初級1のクラスで、ひらがなからスタートの学生。

 彼らも初心者マークですが、実は私もで、毎日それを悟られないよう、ドキドキしながら教壇に立っていました。

 

 初級の学生は学校も初めてで、日本の生活も初めて。

 彼らにいろいろなルールを伝えるのも日本語教師の仕事です。

 しかし、そんな彼らとコミュニケーションを取るのは容易ではありません。

 英語がわかる学生もいますが、分からない学生が大半です。

 (英語ができたら、アメリカ行くよ!と後に学生に言われたこともあります笑)

 

 中国人なので、『連絡事項はとりあえず、ホワイトボードに漢字で書けばわかる!』

 というアドバイスをいただいていたので、私はひたすら毎日書きました。

 (テストの日付、書類の締め切りなど)

 

 初めて教壇に立ったときは、大丈夫かなぁ、ちゃんと伝わっているかな?

と心配してましたが、とくに大きな問題もなく毎日の授業が進んでいきました。

 

 そう……慣れてきたのです…私……

 

 ある日、初めて文法の小テストを授業中に実施しました。

 彼らにとっても、私にとってもテストは初めてです。

 でも、事前に告知をしているので特に大きな問題はないだろうと、余裕をぶっかましていました。

 

 ところがどっこい!

 始めてみると、殆どの学生がペンを片手に問題を解いているではありませんか!

 フリクションじゃなくて、ボールペン!

 シャーペンも消しゴムも机に置いてあるのに、使わず「ペン」……

 衝撃的で思わず、私は言ってしまったのです。

 

私:「えっと…みなさん、テストです。えんぴつと消しゴムです!」

学生A:「先生、テストはペンです!」

私:「いや、テストですよ。ペンは駄目です。ルールです!」

学生B:「先生、中国のルールです!」

私:「はい?」

学生A:「中国は鉛筆はだめです。ペンです!!」

私:「え? いや…それは中国のルールで、日本のルールじゃありません。」

学生C:「先生、言いません。ルール言いませんから、ペンです。」

私:「(いや、確かにそうだけど)……でも、鉛筆と消しゴムでお願いします!」

学生A:「でも、書きました! だめですか?」

 

 クラスにぜったい一人や二人いる、なかなか折れてくれない人。

 それは日本語学校でも同じです。

 でも、この場合は完全に私に落ち度がありました。

 私は、慣れてきて、私と彼らの文化の違いを忘れていたのです。

 中国と日本は別の国で、ルールもそれぞれあります。

 同じところもあれば違う部分もあります。

 とりあえず、書いたものは仕方がないので、その日のテストはそのまま提出してもらいました。

 

 みなさんは、テストといえば「鉛筆」か「シャーペン」で、間違えたら必ず消しゴムで消す!それが小学校からの【常識】だと思います。

 そんな日本の【常識】が、中国人の学生にも通じるものだと、私は勘違いしていました。

 そう、【常識】ということに甘んじて、確認を怠ったのです。

 この後の授業の雰囲気は散々だったのを覚えています。

 私に主張してきた学生は、クラスのリーダー的存在でしたから…(泣)

 

 このままでは良くないと思い、授業のあとで、彼らに「どうして中国ではテストはペンで書くのか?」と聞いてみました。

 

 そしたら、中国ならではの理由があったのです!!→【中国のテスト事情②へ

日本語教師のお仕事(授業:ことばのレッスン②(形容詞))

みなさま、こんばんは。(^o^)

今回は、前回に引き続き、ことば(語彙)の教え方です。

前回は絵を見せて教えるという話をしました。

 

突然ですが、

頭に思い浮かぶ『形容詞』を5つ挙げてみてください!

紙に書き出せる人はぜひ紙に書き出してみてください。

何を思い浮かべましたか?

意外と今の自分の気持ちが現れていたり……いなかったり……

 

そう、今回のテーマは『形容詞』

大きい、高い、きれい、しずか、やわらかい、つめたい、あつい等…

形容詞って抽象的で感覚的なものが意外と多いので、

絵では表せるものと表せないものがあります。

でも、気持ちを表すことって大事ですよね?

今私は「うれしい」のか?「悲しい」のか、「寂しい」のか、

周りにわかってもらいたいし、共感してもらいたい。

だから、日本語学校ではだいたい初級の始めぐらいに教えます。

 

そう、ひらがながやっと書けるようになったピヨピヨ学生の最初の試練!

なぜなら、日本語の形容詞は2種類ありますから!

みなさんは中学校で形容詞と形容動詞を習ったかと思います。

 

 

 

ここで、クイズです!この中で、形容動詞はどれでしょう?

 

「大きい、高い、きれい、しずか、やわらかい、つめたい、あつい、ハンサム」

 

 

 

答えは、「きれい」「しずか」「ハンサム」の3つです。

日本語教育では『形容動詞』ということばは使っていません。

これら全てを『形容詞』という品詞として教えます。

そして、国語の「形容詞」は『イ形容詞』、「形容動詞」は『ナ形容詞』

という呼び方で教えています。

「大き犬」「高山」「きれい人」「静か部屋」「ハンサム彼氏」

そう、最後が「い」で終わるものは『イ形容詞』、

「な」で終わるものは『ナ形容詞』というルールですね!

 

これは外国人は丸暗記です!語彙ですから!

ひたすら覚えます。

「イ形容詞」なのか「ナ形容詞」なのか、ももちろん覚えてもらいます。

(どうしてかは、文法の授業のときにわかります♪)

この辺は日本人が英語を覚える時とほぼ同じで、辞書を使って覚えてもらうこともありますが、絵で表せるものは絵を使います。

『高い』は(値段が)高いと、(背が)高いと2種類あるので、

反対のことばがある場合は、一緒に導入しちゃいます。

 

例) (値段)高い↔(値段)安い

    (山)高い↔(山)低い

      きれい↔きたない

      大きい↔小さい    など ・・

 

ああ、英語もこうやって覚えればよかったなぁ〜と今更ながら思っています。

英語話者にとって「きれい」は厄介です。

日本語の「きれい」には「clean」「beautiful」の両方の意味があります。

そして、学習者の言語によっては、絵だけで見せると誤解が生じることもしばしばあります。

 

 

ここで、クイズです!

「おもしろい」「たのしい」「うれしい」の違いは何ですか?

 

これは、本当に初級あるある。

この質問は毎学期遭遇しますし、間違って使う学生も多いです。

私もはじめは冷や汗をかいて説明していました。

 

みなさんは、どういう時が「おもしろい」で、どういう時が、「楽しい」で

どういう時が「うれしい」ですか?

 

ベテランの日本語教師の先生から教えてもらったのですが、

言語習得は『意味』『形』『使い方』の3つが揃わないと、使えないそうです。

特に大事なのは『使い方』!!

いつ、どこで、だれと、どのような会話で使っているのかが大切。

英語もスペイン語もそれをもっと意識して勉強すればよかった〜!!😥

なんて……

これから、語学を勉強する方を、そこを意識されるといいと思います。

 

 

話をもどして、「おもしろい」「たのしい」「うれしい」の違いですが、

 

1)この本はおもしろい。(◯)この本はたのしい。(☓)この本はうれしい。(☓)

2)田中さんはおもしろい。(◯)田中さんはたのしい。(☓)田中さんはうれしい(?)

3)テニスはおもしろい。(◯)テニスはたのしい。(◯)テニスはうれしい(☓)

4)プレゼントはおもしろい。(☓)プレゼントはたのしい。(☓)

  プレゼントはうれしい。(◯)

※文脈によっては(☓)にならないのは(?)にしています。

 

並べてみると、違いが見えてきませんか?

「おもしろい」はその物や人物についての説明のときに使います。

「たのしい」は何かアクションがあるときに使います。(テニスをする、ゲームをする、旅行をする→たのしい気持ちになる)

「うれしい」は(誰かから)何かをもたらされるときに生じる気持ちです。

「プレゼントをもらった!うれしい」とか「プロポーズされた!うれしい」「妹に赤ちゃんが生まれた→うれしい!」

 

文法書によってはいろんな説明があって、私の解釈は少しずれているかもしれません。

でも、だいたいこんな感じで、授業を乗り切ってます(笑)

「うれしい」はわかるけど、「おもしろい」と「たのしい」の違いが難しいようです。

言語によっては同じらしい・・・

中級の学生の作文を見ても誤用がちらほらありますよ。

でも、言語は間違えてなんぼです!

間違えないとおぼえませんから。

一つずつステップを踏むことが大事だなぁと、教えていて思います。

勉強に近道がないのはそういうことなんですね。😓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本語教師のお仕事(授業:ことばのレッスン(名詞))

日本語を外国人がどうやって学んでいるのか、興味ありませんか?

みなさんはおそらく、英語で日本語を教えているでしょ?!って思っていると思いますが、そんな学校は少ないと思います。

 

ほとんどの日本語学校は『日本語で日本語』を教えています。

これを直接法といいます。(英語などの媒介語を使う場合は間接法といいます)

何故かと言うと、みんなが英語を話せるわけではないし(もちろん教師も)、直接法のほうが、日本語をシャワーのように浴びるのでいい刺激になります。

 

「え〜?!じゃあどうやってコミュニケーションとるの?」

「ひらがなはどうやって覚えるの?」

「文法はどうやって説明するの?」

 

などなど、みなさんは疑問が湧いてくるでしょう?

そこで、ざっくり、日本語の授業を皆さんにお伝えしたいと思います。

 

今回は〈ことばのレッスン〉!

ことば(語彙)です。

 

日本に来たばかりの外国人の学習者は、留学ビザ取得の書類には一応日本語を勉強してきたことにはなっていますが、まぁ、そんなのあてにはなりません。

300時間勉強したとか、色々書いてあっても、「ひらがな」すら書けない人はたくさんいますから、「ゼロ」から教師は教えます。

つまり、スタートは「ひらがな」です。

でも、その前に、まずは「音」を覚えてもらわないと、「書く」ことにはつながらないので、『ことば』を導入します。(これは学校によります)

 

そこで使う道具が、『絵カード』です!

よく、英語の幼児教室で先生が、りんごの絵を見せながら「apple」と言い、

子どもたちにリピートさせてますよね?

アレをやります。

駅の絵を見せながら「えき」

えんぴつを見せながら「えんぴつ」などなど、

がつがつリピートさせます。そして、発音を習得してもらいます。

と同時に、挨拶も「絵カード」で導入です。

英語は一切無し!!使いません!たとえ学生がみんな話せても!

 

アナログですが、これが一番効果的!

なんども何度も繰り返す。

時々一人ずつクイズのように言わせて、緊張感を与え、

語彙を増やしていきます。

1度にはそんなに覚えられないので、毎日徐々に新しい言葉を増やしていきます。

 

日本語教師の七つ道具の一つ目は「絵カード」です。

昔は、全部手書きのものを印刷したりしていたそうですが、

今は学校にPCやプロジェクターが導入されているところが多いので、

簡単に絵を映し出せてとても便利です。

でも、私は学校にあるアナログの絵を使って、フラッシュカードのように

やっています。

 

パワポkeynoteはとても便利ですが、

スライドがどんどん移り変わっていくので、

個々で画像を振り返ることができないという難点があります。

新しい言葉を覚えながら、前の絵をみて一人で振り返る時間が、

記憶定着には大切なので、ホワイトボードに絵をどんどん貼っていきます。

ただ単純なことを繰り返してるだけでつまらない授業ですが、

初級の学生はまだ何も染まっていないので、

目を輝かせてリピートしてくれるので、かわいいです!!

初級の学生を受け持つと、親鳥になった気持ちになります!(笑)

しかし、時間が経つと………

 

とまぁ、これは〈ゼロ初級(ひらがなからスタート)〉の学生の場合の語彙導入です。

語彙は名詞は絵を使って教えられますが、抽象的なもの(形容詞、副詞など)は絵では表せないので、文脈で教えるのですが・・・それはまた次回に♪